2013年

11月

16日

選択の現場から-災後の暮らし(1)地域医療/医師・看護師不足、足かせ

 東日本大震災後、初めての知事選(27日投開票)が選挙戦の中盤に入った。医療・福祉の充実や産業の活性化、地域再生など、震災を経て輪郭がさらにはっきりした地域の課題も多い。知事選で何が問われているのか。県内の暮らしの現場を歩いた。(5回続き)

<在宅推進に限界>
 登米市迫町北方に住む高橋甲さん(89)は5月に子宮頸(けい)がんが見つかり、一時は寝たきりになった。7月から月2回、自宅で医師の診察を仰ぎ、最近は起き上がれるようになった。
 同居する嫁の清津子さん(69)は「家で医師に診てもらえるとは知らなかった。家族の負担も減り、助かる」と話す。
 ことし4月、市内に開業したやまと在宅診療所登米が診療に当たる。同診療所は登米市や栗原市、石巻市などで約90人の患者を診ている。
 「登米市ではまだ、在宅医療があまり市民に知られていない。往診を行う医院が増えれば、患者はより安心して療養できる」と院長の田上佑輔さん(33)は言う。
 登米市には同診療所を含め、24時間態勢で往診を行うなどの要件を満たす在宅療養支援診療所が3機関しかない。10万人当たり3.6機関で県平均5.9機関を大きく下回る。
 県は4月にまとめた第6次地域医療計画で初めて、在宅医療の推進・充実を掲げた。今後5年間で在宅療養支援診療所を増やし、地域間格差の解消を目指す方針だ。
 登米市の10万人当たりの医師数101人(2010年)は、県平均222人の半数未満。約30人いる開業医も平均年齢61.7歳と高齢だ。地域の開業医からは「県が中心となり専門医を増やさないと、郡部の在宅医療は充実しない」との声が聞かれる。

<「仕組みが必要」>
 仙南地域では、看護師不足が基幹病院の体制充実を妨げている。
 角田、大河原、村田、柴田の4市町で運営するみやぎ県南中核病院(大河原町)では看護師が集まらず、がん患者を受け入れる緩和ケア病棟を開けずにいる。
 蔵王連峰を望む12床の個室はことし2月に完成した。「看護師さえいれば、すぐに始められるのに」と熊坂雅之事務部長はもどかしそうに語る。
 外来や入院の病棟に勤務する約250人の看護師や准看護師を緩和ケア病棟に回す余裕はない。新たに15人程度を確保し、遅くとも来春には患者を受け入れたいという。
 同病院がある仙南医療圏の10万人当たりの看護師は441人(10年)。県平均の684人を大幅に下回り、県内の4医療圏で最も少ない。
 「地理的に仙台の病院に勤務でき、仙台や関東地方の病院への就職を希望する看護学生が多いためではないか」。看護師不足の背景について、地域の医療関係者はこう口をそろえる。
 県の第6次医療計画では、17年度までに10万人当たりの看護師数を全国平均の744人に増やすと掲げている。
 同病院の内藤広郎院長は「在宅医療の推進や介護施設の増加に伴い、看護師の需要はさらに高まる。県内で育成するほか、県外から看護師を呼び込み定着させる仕組みが必要だ」と訴える。(登米支局・肘井大祐、大河原支局・田柳暁)

 

2013年10月17日木曜日